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熱海の土石流に関して

まず最初に、今回の災害によってお亡くなられた方々のご冥福をお祈りしますと同時に、被害を受けられた方々の一日も早い復興をお祈りするものです。

私は当該地域を訪れたこともなく、又地盤に関する情報を持っているものではありません。
報道されるニュースや写真から判断しているのですが、どのマスメディアも、宅地造成法のような規則に則ってなされた「盛土」と単に谷筋を埋めるために使われた「捨土」とを混同されているのではないかと思っています。

一般に、急峻な谷筋を正規の安全性を確認した造成工事で行う「盛土」は地すべりに対する安全性を高める非常に有効な工法です。この工法では、水が流れていた元の谷筋に、有孔の埋設管が血管の如く配置され、盛土前と同等の水量が下流側に安全に流れるように工夫されています。また、造成すると雨水の流出比が増加するので、一定の表面水を一時的に貯めておく調整池が設置され、安全に水を下流に流すよう計画されます。上記の埋設管や調整池の大きさや配置の位置は現地の地形や流域の大きさ、降雨強度や降雨量から決定されます。
更に下流側の斜面は十分な勾配を取り、表面を十分保護できる対策を立てておけば非常に安全な斜面が形成されると考えられます。

このように、十分な管理のもとで「盛土」が作られていたならば、たとえ今回のような異常な降雨時においても、盛土が根こそぎ押し流されるような災害は起きない、と考えています。

今回放映されている写真などを見ますと、上述しました埋設管などや調整池のようなものは全く見当たりません。災害の原因は、異常な長雨で、全く管理されないで行われた「捨土」の含水量が限度以上に増加し、土の強度が減少して、液状化している土と同じような状態となり、捨土全体が根こそぎ滑っていったのではないかと考えています。

また、報道によりますと、この谷筋が森林法で単に届け出だけで、全く工法も安全性も確認されることなく行われた、となっています。工事の管理も埋め立てた業者任せで実施されてのではないかと危惧します。この報道が正しいのであれば、大変な問題です。このような、届け出だけで行われたものは、早急に調査されるべきだと思います。

しばらくの間、種々の事情でブログを休止していましたが、今回の災害によって、開発の規則に従って埋め立てられた土地が、全く安全性の確認されていない捨土と混同されて報道され、必要以上の規制を受けるのではないかと危惧し、ブログを再開しました。

盛土された土地を見直されるのであれば、専門家による全般的な意見も大切ですが、開発地は各々土地の状況や自然条件が異なりますので、開発地ごとのきめ細かい評価が実施され、今回のような悲惨な土砂災害がなくなることを切に希望するものです。

以上