日別アーカイブ: 2017年2月3日

豊洲市場の汚染水の問題について(追加)

前回のブログで書き忘れたことを追加します。

最近の報道を見ていますと、地下水の測定結果だけが報道されていますが、地下水の採取深度についてはほとんど報道されていません。そこで、当初専門家会議で議論され、決定された汚染土対策と地下水の採取深さを正確に述べたいと思います。

1.専門家会議で決定された汚染土対策案と地中に汚染土が残留している可能性

(1)専門家会議で決定された汚染土対策案は、何回も繰り返すことになるが、図-1に示されている通りである。旧地盤面(A.P.+4.0m)から2mの深さ(A.P.+2m)までは土壌を全て掘削し、土壌汚染基準以下に処理された土で埋め戻す。

fig-1

図-1

(2)さらに、A.P.+4mから上部に2.5mを新たに良質土で盛土し地盤高をA.P.+6.5mとする。
(3)問題はA.P.+2.0m以深の土であるが、詳細調査及び引き続き行われた絞込み調査により出来る限りの処理がなされ、ほとんどの土壌が土壌基準以下に処理されている。
(4)残念ながら、このA.P.+2.0m以深の部分は全て掘削して調べたものでなく、ある間隔のメッシュ状に上から調べたものであるので、若干ではあるが、汚染土が残されている可能性がある。

2.地下水の採取深度

(1)地下水のモリタリングようの観測井の構造はA.P.+2.0m以下にストレーナーが切られていて(有孔管となっていて)、採取された地下水はA.P.+2.0m以下のものである。
(2)上述したように、この部分に汚染土が含まれている可能性は零(0)ではない。
(3)今、「水質基準の79倍」ということだけが報道されているが、この値は広い市場の1点にすぎず、また、この値は地表面から4.5m下の深さの値である。
(4)専門家会議で決められた対策案の原案では、A.P.+2.0mより上に4.5m(2.5m+2.0m)が良質土で盛土されていて、例えA.P.+2.0mの深さで汚染源が発見されても、地表面に影響を与えるものではないと考えられる。

3.市場建屋部の考え方

(1)残念ながら、市場の建屋部(建築物の下部)は空間となっていて、盛土部分がないため、A.P.+2.0mの深さで測定された汚染は直接地下空間に影響を及ぼすことになる。従って、何らかの対策が必要である。
(2)技術会議で提案された地下水管理システムで汚染水対策を行うことは次の理由により問題があると考える。
市場は非常に長期に使用されるので、地下水管理システムが全く故障もなく稼働するとは考えにくい。
現在排水に使われている砕石層も長年の間に目詰まりし、排水が有効でなくなる恐れがある。
前にも指摘したが、周辺の擁壁や下部の不透水層で遮水性の空間を作ることになっているが、これには種々の問題がある。
さらに、長期の間には、巨大な地震の発生も考慮しなければならない。どのような自然現象にも耐えうるものでなければならないが、これをギャランティすることは難しいと考える。
地下水管理システムを働かせるために、長期にわたってランニングコストがかかる。

4.現実的な解決案

(1)これも繰り返しになるが、解決策を再掲すると図-2に示すとおりである。

fig-5
図-2

(2)解決策の前提条件は「専門家会議で提案された解決策(図-1)が有効である。」ということである。
(3)建家部は盛土がないので、4.5mの盛土と同じ効果を持つよう、建家に必要な設備空間を残してコンクリートと良質土で埋め立てる。
(4)コンクリートと良質土の厚さは2.0m程度と考えられるので、コンクリートの厚さは4.5mの土の持つ遮塀性と同じになるように決める。
(5)地下水は出来るだけ動かさないことが重要だと考えるので、水管理システムによる揚水は休止する。
(6)現場で存在する観測井、揚水井、旧ボーリング孔等、A.P.+2.0m以深から地表面まで貫通している孔は全てコンクリートモルタル等を詰めて閉鎖する。
(7)新たに地表面近くで、汚染土に起因する変化を観測する。
(8)建家周りの排水方法を再度調べ、どの様な豪雨に対しても地表面付近で処理できるよう検討する。

以上ですが、ご批判を頂ければ幸いです。